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【10】  ファンタジックチルドレン −ベフォールの子供たち−
      ©なかむらたかし/日本アニメーション・FC製作委員会 2004

2004年10月から2005年3月まで放送されていた全26話のアニメーション。

私がはじめて見たのは第1話、セラフィーヌの死と、窓ガラスを割ってデュマから逃げるベフォールの子供たちでした。幼い頃に見ていた手塚治虫〜石森章太郎アニメのような絵で、あまり抵抗を感じなかったのです。どちらかといえばアニメ嫌いなので、その後も見ようと思って見ていたわけではなく、偶然チャンネルを合わせて(もの書きに行き詰るとよくやる行動)何度か同じような偶然が重なり、徐々に引き込まれていったのでした。しかしあまりにも複雑なので、現在DVDをそろえて第1話から見直しているところです。

その複雑な物語のために、年表を作ってみました。こういうことをするのは萩尾望都の『ポーの一族』を読んで以来のことです。作品の情報整理のため、ですが、年表作成のきっかけはコンラート・ルーゲン(=レントゲン)の伝記を読んだことでした。X線装置の特許を申請せず技術を広く世界に公開した、その彼が、第一次大戦後、ドイツの破局的なインフレのために貧困のうちに亡くなったことを知って、作品では言及されていない欧州史も付け加えた年表を作ってみたいと思ったのです。さらに、アリスが調べてきたゲルタの経歴を見たことも大きかったです。

下は年表を作っている間に考えていたことなど。この作品を見たことがない方には意味不明な文章ですので。

魔物と呼ばれるベフォールの子供たち(第1話「闇の果てから」、第2話「彷徨う想い」)
「記述だけでも500年で13回」「死んで、蘇り生き続ける子供」「おぞましき悪魔、死の吸血鬼」「やつらは死んだふりをしているだけだ。数十年ごとに墓の中から起き上がり、子のいる家庭にもぐり込む。子を殺し家の者になりすます。やつらはこの先また現れる」「墓をあばき眠っている間に殺さねば」・・・。
不死の(ベフォールの場合は転生を繰り返している)子供というと、どうしても『ポーの一族』を連想してしまうのですが、実際他にも『ポー』を思わせる設定があり、自分が何故この作品に惹かれたのかがよくわかります。『ファンタジックチルドレン』は、私にとって『ベフォールの子供たち』という作品だったわけです。パルザの脱落、メルの記憶の混濁など、後になってじわじわと効いてくるエピソード満載の、しかしこの時点ではなんのことかさっぱりわからない1〜2話。すごいわ・・・。

ベフォールの子供たちを追うクックス刑事(第3話「行きたい場所」〜第6話「コックリ島(2)」)
コール家を訪ねたり、ファントム・ゲド研究所に興味を持ったり、のクックス刑事と、それに付き合わされるアリス監査報告員。クックス刑事は、ちょうど111年前のラドクリフ博士のように世紀を超えて繰り返される白髪の子供たちの集団失踪事件を追いかけ、しかし彼のように狂気にはとらわれておらず、彼らの存在に引き寄せられただひたすら謎に迫ろうとしている。ここでまた、オービン卿のバンパネラハンティング、と『ポー』な連想をせずにはいられませんでした。

ベフォールの子供たち、閻魔(第7話「ベフォールの子供たち」〜第9話「オエセル」)
このあたりでやっと、この作品に惹かれた一番の要因であるベフォールの子供たちの、「地球上での」過去の一部を知ることができ、彼らが言葉通りの「魔物」ではないことがわかって私のベフォール熱は加速しました。閻魔が宇宙の摂理、修復現象だとするならば、脱落したパルザにも、ギリシアの記憶がなくなる12歳頃まで何度も閻魔が現れていたということなのだろうか、と考えると泣けてきます。アギたちに頼ることなく、ひとりであの閻魔と闘い続けていたのだとしたら、パルザって思ったより強い人だったことになりますね。第1話でも、閻魔が見せる幻にひとりで怯えていたから。5歳の集合に応じていれば、ハスモダイのようにアギに助けてもらえたのに、なんて。

ゲルタ(第10話「ゲド機関」〜第15話「追憶」)
ファントム・ゲトの所長ゲルタ・ホークスビー。アリスが持ってきたゲルタの履歴書にはGherta Hawksbeeとありましたが、ふつうゲルタといえば「ゲルトルート(Gertrud)」の短縮形「Gerta」。ヘルマン・ヘッセの小説「春の嵐」の原題も「Gertrud」。「デミアン」といい、あの二人はヘッセ繋がりなのですね。しかしこの、一瞬しか映らないゲルタの経歴が泣けるのです。Rennep Gymnasium、Ludwig Maximilians Universityって。Rennepはもちろんコンラート・ルーゲンの生誕地であり、10歳のゲルタが通い詰めたルーゲン博物館のある街。LMUはルーゲン博士が最後に勤めたミュンヘン大学。ルーゲンの肖像画でいっぱいのゲルタの部屋よりも、この履歴書の方が私には衝撃度が高かったです。そしてゲルタの閉所恐怖症の原因とメルが書き残したメモ。「一人いれば充分さ・・・」と優しい声でつぶやいたあのデュマが、何をしたのか。これらを考えるとかなり、辛い。

ギリシア編(第16話「回帰、霧の中へ」〜第18話「惨劇」)
放送時間を確認してオープニングからちゃんと見るようになったのがこのあたりから。これらギリシア編だけでも充分見せてくれる内容(「惨劇」のラストのセスが特に)です。

年表を作っていてちょっと変なのでは、と思ったことがいくつか。ラドクリフ博士がベフォールの子供の墓をあばいたのが1919年2月ということ。1918年、大戦直後のヨーロッパを3年にわたり旅してベフォールの子供の痕跡を追っていたはずなのに、大戦終了後から3ヶ月で墓あばきは早すぎないかしら。閻魔が見せるハスモダイの前世であるアンドリューの家族の幻も、1500年代にあの屋敷の内装はないんじゃないのとか、この時代紅茶はまだないでしょとか。細かいけれど色々気づいてしまいました。SFっぽい設定には興味がないのでゾーンとは、オエセルとは、なんてことにはまったく疑問を抱きませんでしたが。

DVDはまだ5巻(第18話)までしか見ていないので、最終話及び新作ショートストーリーまで見終えたら、このページと年表を書き直すと思います。とりあえずUP。

(2005/08/16)


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