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John Cornford と彼の一族、そして彼が生きた時代を知るために適した本を集め、思いついた順に取り上げています。分類も非常に大雑把で、あまり意味が無いかもしれません。

初めはまじめっぽく、スペイン内戦関係をメインにしようと思っていたのですが、どうせ趣味のページなのだからとちょっと開き直ってみました。ジョンとはまったく関係なくてもめぐりめぐってダーウィン家に関係してくれば載せてしまいます。
<伝記、小説など>     <スペイン内戦>     <その他>


 伝記、小説など (タイトル/著者/訳者/出版社/初版) ▲ページトップへ

武器を理解せよ 傷を理解せよ/ガラッシ編/小野協一/未来社/1983
ジョン・コーンフォードの詩・評論・書簡集。彼は21歳の誕生日に亡くなっているので、著作のほとんどは10代に書かれたもの。それを考えると圧倒されて、読み続けるのが難しくなってしまうほどです。詩は、やはりスペインの戦場で書かれた「アラゴンからの手紙」が一番わかりやすいかも。書簡集にある、ストウ校時代の、母親フランセス・コーンフォード(詩人)とのやりとりが興味深いです。本当に16歳の少年が書いた手紙なのかと、何度も日付を確認してしまいました。ジョン宛のフランセスの手紙も多く、「大人になってもダーウィン家の少女だな〜」と思うような調子で嬉しくなってしまった。


思い出のケンブリッジ −ダーウィン家の子どもたち−/グウェン・ラヴェラ/山内玲子/秀文インターナショナル/1988
著者は、『種の起源』で有名なチャールズ・ダーウィンの次男でケンブリッジ大学の数学・天文学教授であったジョージの長女。そしてジョン・コーンフォードの母フランセスの従姉妹。本書は1952年(67歳)に出版されたものですが、1880年代から20世紀初頭にかけてのケンブリッジの知識人の私的な生活、ダーウィン家のおじ・おば達が、画家であった著者自身のイラストの魅力もあり、生き生きと描き出されています。グウェンの文章も魅力的で素晴らしいのですが、おそらく翻訳がまた素晴らしいのでしょう。ジョンの弟クリストファーは、グウェンに感化され画家になっています(『武器を理解せよ・・・』に載っているジョンの、母宛の手紙には「グウェンやクリストファーが夢中になっているルノアールは無力で弱々しく見えてひどくがっかりした」という一文がある)。

ユグノー系の由緒ある家の出身だったアメリカ人の母と、教会には何年も行っていなかった父。この二人が結婚に至るまでの様子を、当時書かれた母の手紙をもとに描き出した第1章を読んだだけで、私はこの本に、そしてグウェンに惚れ込んでしまいました。第7章「エティ伯母さん」なんて最初から最後まで笑い通しで息苦しくなるほど。ダーウィン家とキリスト教の関係も興味深いです。魅力的な人々とともに当時の政治家や芸術家たちもさりげなく顔を出します。「ケンブリッジ」「ブルームズベリー・グループ」に興味のある方は、是非読んでみてください。



ジョージ・マロリー/D・ロバートスン/夏川道子/山洋社/1985
「そこに山があるから」で有名な登山家ジョージ・マロリー(1886-1924)の伝記。1924年にエヴェレスト頂上へ向かったまま消息を絶ち、遺体が発見されたのは1999年、山頂付近で。登山にまったく興味の無い私のこの本に対する関心は、ダーウィン家周辺の人びとの話題。特に興味深かったのは、 他にもこまごまとした情報がたくさん。ジェフリ・ケインズはチャールズの妹マーガレットと、ジャック・ラヴェラはチャールズの姉グウェンと、フランシス・コーンフォードはチャールズの従姉妹フランセスとそれぞれ結婚したことを考えると、チャールズっていったい・・・と可笑しかったです。


ダーウィンと家族の絆/ランドル・ケインズ/渡辺政隆・松下展子/白日社/2003
原題「ANNIE'S BOX」。チャールズ・ダーウィンと彼の家族の伝記。ウェッジウッド家の従姉妹エマとの結婚から始まります。著者はダーウィンの曾孫(孫娘マーガレットの孫)で、「家族のガラクタ入れを漁って」いたときに、10歳で病死したダーウィン家長女アニーの思い出の品を納めた文箱を見つけたことから、この本が生まれたとのこと。
『思い出のケンブリッジ』を読んだときは大笑いだったダーウィン兄弟の病気礼賛も、この本を読むとそれが、アニーの死が家族に与えた悲しみゆえであることがよくわかります。特に幼い妹エティの受けたショックはかなり大きかったようです。また、母親エマは子供たちの健康について、いとこ同士の結婚による遺伝的な弱さをも心配していたらしく、アニーの死を悲しむだけではなく、他の子供も同じように失うのではないかと悩むようになっていました。



ソクラテス以前以後 ギリシア哲学小史/コーンフォード/大川瑞穂/以文社/1972
著者はジョン・コーンフォードの父、フランシス。この他にも邦訳が出ているらしいのですが、読んでもわからないだろうとあきらめてます。専門的で、素人が手を出す本ではなさそうです。本書は1932年8月にケンブリッジで開催された夏期講座のギリシア哲学課程の一部。購入のいきさつは、図書館で著者名を見てすぐに手に取り、本文ではなく解説のほうを先に読んでジョンの父であることを確認、書店へ即注文という、内容無視もいいところでした。別に息子について書かれた箇所など無いのですが、ジョンにつながるものはおさえておきたかったし、「饗宴」や「ソクラテスの弁明」は読んでいたし興味が無いわけではなかったから。しかしやはり、まともに読めたのは第3章「プラトン」くらいだった。


丘の家のセーラ/フランセスの青春/海を渡るジュリア/グウェンの旅立ち/R・E・ハリス/脇明子/岩波書店/1990-95
英国サマーセットに住むパーセル家の4姉妹が主人公の10代向け小説『ヒルクレストの娘たち』シリーズ。父を早くに亡くしていたパーセル姉妹は母の死後、後見人であるマッケンジー牧師らを説き伏せ、17歳〜7歳の彼女達と頼りになる家政婦アニーだけで、それまで通りヒルクレストで暮らしていくことになった。画家を目指す長女フランセスはロンドンのスレイド美術学校へ入る。絵のことだけを考えたいと、惹かれあっていたマッケンジー家の長男ガブリエルの求婚を断ってしまう。1914年に始まった戦争にマッケンジー家の息子たちは大陸へ出征、彼らのあとを追うように次女ジュリアが従軍看護婦に志願し海を渡る・・・。

物語はそれぞれ1910年の母の死から始まりますが、同じ場面も主人公によって感じ方が違ってくるので面白いのです。マッケンジー兄弟とのかかわりを通してパーセル姉妹が大人になっていく話です。4部作の予定が6冊くらいになるとのこと。何故この小説をここに載せたかというと、どう考えてもベースに『思い出のケンブリッジ』がある、と思ったからなのです。登場人物の名前からしてグウェン、フランセス、ルース、ジェフリですし。他にもジュリアの友人の夫がジョン・フォード。これってジョン・コーンフォードから取ったのか?フランセスが周囲を説き伏せてスレイドに入り、画家になるというのもグウェン・ラヴェラそのまま。こういう読み方をしているので、さらにハマってしまうのです。詩人になろうとしていた天才肌のアントニーが年をごまかしてまで戦争へ行き、戦死したあたりはどことなくジョン・コーンフォードと重なって胸が痛くなりました。実際、フランセスの息子が休暇中に行方不明になったときに「ジョン・コーンフォードのようにスペインへ行ったんじゃ・・・」と大人たちが青くなる場面があったし。


ダーウィン自伝 (ちくま学芸文庫)/チャールズ・ダーウィン/八杉龍一、江上生子/筑摩書房/2000(1972)
ダーウィンの自伝は、彼の死後5年たった1887年に息子フランシスの編集により『チャールズ・ダーウィンの生涯と書簡』として出版されましたが、ダーウィンの妻エンマと娘ヘンリエッタの希望により大幅に削除されて刊行されたのでした。本書はチャールズ・ダーウィンの孫娘ノラ・バーロウ編集による、削除された部分を加えた完全版。まえがきと編者による解説には1887年当時のダーウィン家内部の意見の分裂、感情の高ぶりなどのいきさつなどが書かれています。編者のノラ・バーロウは↑の『ダーウィン家の子どもたち』にも出てくる従姉妹のノーラ。また↓の『遥かなるケンブリッジ』に出てくるバーロウ博士の母。まえがきの最後に「多くの方々から助力を与えられた。(略)コーンフォード夫人および故ラヴァラット夫人の両いとこ、(略)のみなさんである。」と書かれています。「ラヴァラット」とはグウェン・「ラヴェラ」の英語読み?


ダーウィン 進化の海を旅する/パトリック・ロール/平山廉 監修・南條郁子、藤丘樹実 訳/創元社/2001
「知の再発見」双書99。ダーウィンの生涯と業績を豊富なカラーイラストと写真で紹介しています。ダウン・ハウスのイラスト、ダーウィンの家族の写真も多く、「老馬トミーにまたがったダーウィン(1870年代はじめ)」の写真は孫娘グウェンの著書の中にあるスケッチのもとになった写真と思われます。またわずか1ページではありますが、「ダーウィンの息子たち」として5人の息子の(晩年の)写真と略歴もあります。


ダーウィンの時代 科学と宗教/松永俊男/名古屋大学出版会/1996
「本書は19世紀のイギリスにおける科学と宗教の関係に注目し、両者が自然神学によって一体となっていた状況から、それぞれ独立した別個の領域と認識されるようになっていった過程を追跡したものである」。科学と宗教の問題はダーウィン以前にもあったはず。どのように折り合いをつけていたのか?この本を読むと「なるほど」と思います。ヴィクトリア朝の科学と宗教の闘争の根底にはイングランド教会における広教会派と高教会派の対立があったというのにも「なるほど」。


ケンブリッジのエリートたち/リチャード・ディーコン/橋口稔/昌文社/1988
原題は「The Cambridge Apostles」、ケンブリッジ大学の秘密主義のクラブ、使徒会について書かれた本です。1820年に12名のメンバーによって会が創設されたことから「使徒会」と呼ばれるようになり、以後、哲学者、詩人、経済学者など、各時代最高の知識人たちがメンバーになっていました。スペイン内戦には当時の知識人が多数、義勇兵に志願してスペインへ渡っていますし、ジョンは使徒(メンバー)ではなかったけれども、1930年代ケンブリッジの有名人であったため、本書にも記述があります。「ブルームズベリー・グループ」の人々、1930年代の共産主義、1950〜60年代相次いでソ連に渡ったスパイたち、同性愛など、どの角度・分野からでも読めるイギリス上流階級の社会史。


ダーウィン/江上生子/清水書院/1981
ジョンの母方の曽祖父であるチャールズ・ダーウィンの伝記。センチュリーブックス・人と思想シリーズの本なので簡潔でわかりやすい、ダーウィン入門編です。彼の生きた時代が産業革命の進む英国であったことや、牧師になることも考えてケンブリッジ大学の神学部に入ったことなど、順を追って考えると彼の人生は非常に面白い。年表にある参考事項も、ファラデー、ファーブル、メンデルなど、この時代の波が感じられます。


失われた時代 1930年代への旅/長田弘/筑摩書房/1990
全四章のうち、「カタルーニャ幻影行」(オーウェル)「墓地−死後の生」(ロルカ、ベンヤミン、ニザン、パステルナーク)「アウシュビッツにて」は1973年に中公新書『アウシュビッツへの旅』としておさめられ、「ある詩人の墓碑銘」(コーンフォード)は筑摩書房の『展望』1976年1月号、6月号に発表されたもの。つまり本書は、90年に出版されていますが、すべて70年代に書かれたものです。フランス、イギリス、社会主義時代のソ連、ポーランド、まだフランコの独裁政権下にあったスペイン。著者はこれらの国々を旅し、ファシズム、スターリニズムの時代を生きた芸術家たちの生と死にきざまれた「書かれざる哲学」について書いています。「ある詩人の墓碑銘」は、スペインでのジョンと(彼が戦死したロペラ村へも行き、写真もある)、彼の生い立ちについて(どちらかというと彼の両親とルパート・ブルックについて)。ロンドンではジョンの弟クリストファーと、恋人だったマーゴット・ハイネマンにも会い、長い時間、質問に答えてもらったそうです。


 スペイン内戦 (タイトル/著者/訳者/出版社/初版) ▲ページトップへ

スペイン内戦をめぐって(研究社選書)/小野協一/研究社出版/1980
副題は『イギリスの1930年代文学』。「内戦を歌った詩人たち」と「内戦を戦った詩人たち」について書かれています。参考文献としてピーター・スタンスキー&ウィリアム・エイブラハムの『Journey to the Frontier』が挙げられていますが、これの邦訳を待ちわびて(笑)いる私としてはとてもありがたい一冊でした。


回想のスペイン戦争/フィリップ・トインビー編/大西洋三、川成洋、結城哲、山口晴美/彩流社/1980
スペイン内戦についての文献は山のようにあるので、ジョンについてある程度書かれているものを選んで買っています。本書では「国際旅団兵(二)」や「ある素朴な革命家の日記」で少し、語られています。


スペインの義勇兵/ジョン・ソマーフィールド/川成洋/彩流社/1981
義勇兵としてスペインでジョン・コーンフォードと行動を共にしていたジョン・ソマーフィールドの回想録。本書は、スペイン内戦以前からの友人であったジョンに捧げられています。冒頭の著者へのインタヴューでもジョンに触れられていて、彼がジョンに魅了されていたことがはっきりとわかります。訳者によるジョンについての短い評伝には、ジョンの弟クリストファーから直接聞いた話もあり、この本はジョン・コーンフォードについての文献と言えるかも。


青春のスペイン戦争(中公新書)/川成洋/中央公論社/1985
6人のケンブリッジ大学からの義勇兵が取り上げられていて、最初がジョン。次がジュリアン・ベルなので、やはり『Journey to the Frontier』がベースになっているようです。ストウ校時代(全生徒に入隊を義務付けた将校訓練隊に対する反発、母親らジョージ王朝派の詩人たちへの反発)など、ケンブリッジ以前のジョンについても触れられていて、ジョンの評伝としてはおそらく最長。


スペインの死を見たと言え スペイン戦争と文学/J・M・マスティ/平舘勝幸、渡利三郎/れんが書房新社/1986
こういうタイトルだと間違いなくジョンについても書かれているわけですが、ここでは特に、詩人ジョン・コーンフォードの方に重点が置かれていて、詩の批評が読めるのが他のスペイン内戦関係の文献と違うところ。しかし、その詩も少ないし短いし、その他大勢的な扱い(仕方ないけれど)。ソマーフィールドの『スペインの義勇兵』も取り上げられています。


ロバート・キャパ 時代の目撃者/リチャード・ウェーラン解説/原信田実/岩波書店/1997
キャパの写真集(1936−1950)。私には戦場の写真よりも、1936年11月11日の第一次大戦終戦記念パレードに参加する復員軍人たち(フランス)や、1945年8月の瓦礫のベルリンなど、第二次大戦前後のヨーロッパの写真の方が重く感じました。特に、昔キャパ展で見て衝撃を受けた、1944年8月18日フランス・シャルトルでの写真(記憶と少し違っているので、もしかしたら同じ場面の別な写真かも知れない)。解放後、輝くような笑顔で通りを歩く人たちの中央に、頭をそられ、ドイツ兵との子どもを抱いて歩かされているフランス人女性。映画『愛と哀しみのボレロ』にも同様のシーンがあった気がするのですが、おそらくそれはこのキャパの写真をもとにしているのでしょう。


ロバート・キャパ スペイン内戦/J・P・フシ・アイスプルア、リチャード・ウェーラン、キャスリーン・コールマン解説/高田ゆみ子/岩波書店/2000
これまで未発表のものを含むキャパの写真集。解説も、この時代のスペインや各国の左翼運動についての「反ファシズムの文化」や、キャパの活動を追った「スペインのロバート・キャパ」、内戦の中にあった反ファシズム以外の社会的闘争、男女同権をめぐる闘争についての「スペイン内戦中の女性たち」などがあり、キャパの写真のもつ意味をより深く知ることができます。


大地と自由 Land and Freedom/監督ケン・ローチ/脚本ジム・アレン/主演イアン・ハート/英・西・独 1995
スペイン内戦を描いた映画。1時間50分。日本では1996年11月公開。私も公開時に岩波ホールへ観に行きましたが、平日の最終だったせいか貸切のような状態でした・・・。物語は現代の英国リバプールで一人の老人が息を引き取ったところから始まります。

遺品を整理していた孫娘が、古いトランクの中に赤い布に包まれた乾いた土と、古い新聞記事(「モロッコでスペイン軍反乱」「”労働者日報”共和国政府を救え!」)、何枚もの写真、そして祖父デイヴィッドの手紙が入っているのを見つける。1936年のリバプール。失業中だったデイヴィッドは、スペイン内戦への参加を呼び掛ける共産党の集会で、ファシストと戦う民兵の映像を見ていた。ニュース映画を見ながら慣れない英語で懸命に訴えかけるスペイン人民兵に心を動かされたデイヴィッドは、恋人を残しバルセロナへ向かう・・・。

スペイン内戦の義勇兵というとオーウェル、ヘミングウェイなど知識人たちが有名ですが、この映画では名も無い若者、労働者階級のデイヴィッドが主人公。共産党による反対勢力、POUMやアナキストへの弾圧など、戦争と革命が同時進行していた混乱するスペインで、政治的な動機は持つものの、政治よりも人間の尊厳を守るため、ただファシストと戦うためだけにやって来た青年が、翻弄され歪められていく様が描かれています。



ぼくはスペインで戦った/エズモンド・ロミリー/橋口稔/平凡社/1974
1937年に書かれたロミリーのスペイン内戦体験記。15歳でウェリントン・コレッジを中退し、パブリック・スクール改革のための新聞を刊行した「反逆」青年ロミリー。1936年10月〜12月の間、18歳のロミリーは国際旅団に参加、スペインで戦っており、そこでジョン・コーンフォードにも会っています。スペインでの体験は短期間で、本書は帰国した年に英国で出版されていますので、ここには内戦全体について(共和国政府内の対立など)は書かれていません。所属した部隊が参加した幾つかの戦闘と、一緒に戦った戦友たちについてが主で、今まで読んだスペイン内戦の回想、評伝とはだいぶ印象が異なります。


蝶の舌/監督ホセ・ルイス・クエルダ/脚本ラファエル・アスコナ/主演フェルナンド・フェルナン・ゴメス、マヌエル・ロサノ/西 1999
スペイン内戦前夜を描いた映画。1時間35分。物語他は公式サイトで。

モンチョが慕う先生は共和派、アテオ(不信心者)という設定ですが、その先生について、新約聖書を意識したシーンがいくつか見られたのが興味深かったです。喘息の発作を起こし苦しんでいるモンチョを抱きかかえて川へ沈めるシーンは、バプテスマの場面を連想させます。またラスト・シーンも、ゴルゴダへ連行される途中に兵士と群集から侮辱されながら歩くキリストと重なります。昨日まで共和制をよろこび支持していた人々が、保身のために侮辱の言葉を彼らへ投げつける。批難する側がキリスト教徒であるというのが皮肉ですね。


蝶の舌/マヌエル・リバス/野谷文昭、熊倉靖子/角川書店/2001
スペイン、ラ・コルーニャ生まれのマヌエル・リバスの短編集。スペイン内戦前夜のガリシア地方を描いた映画『蝶の舌』の原作にあたるのが「蝶の舌」「霧の中のサックス」「カルミーニャ」の三作。
映画を観たときにはわからなかった、護送車にむかって叫んだモンチョの内面を、ほんの少しだけ、知ることができたような気がしました。少なくとも、考えなしに叫んだわけではないのだと。それでもやっぱり疑問は残ります。いったい、どんな気持ちで?


スペイン戦争 青春の墓標 ケンブリッジの義勇兵たちの肖像/川成洋/東洋書林/2003
とりあげられている義勇兵はジョン・コーンフォード、ジュリアン・ベル、デイヴィッド・ゲスト、マルカム・ダンバー、サー・リチャード・リース、ピーター・ケンプ。あとがきに「すでに絶版となった『青春のスペイン戦争−ケンブリッジ大学の義勇兵たち』(中公新書、1985年刊)を中心にして、それ以降に入手できた資料や情報を補充し、当時のイギリス社会、そしてスペイン戦争終了からほぼ現在にいたるまでの元義勇兵の活動の全体像をまとめたもの」とありました。ジョンに関しての新しい情報は特にないのですが(当たり前)、ジョンの家族、友人たち、そしてその他の義勇兵たちのその後を知ることができて嬉しかったです。また、参考文献リストは1935年〜2003年までのスペイン内戦、1930年代のイギリス関連書がぎっしりでおすすめです。


 その他 (タイトル/著者/訳者/出版社/初版) ▲ページトップへ

遥かなるケンブリッジ 一数学者のイギリス/藤原雅彦/新潮社/1991
著者が文部省の長期在外研究員としてケンブリッジで過ごした1987年8月から約1年間について書いたもの。私としてはところどころ顔を出す「ダーウィンの曾孫」教授に惹かれて買った本。「向こう隣の研究室にいたバーロウ博士」はグウェンの従姉妹ノーラ(グウェンいわく、もの静かで、小さくて頑固でまじめくさったロバのようだったが、頭がよくて落ち着いていて、きれいな子だった)の息子。このバーロウ博士はほとんど出てきませんけど、内容ももちろん面白かったので。


オスカー・ワイルドの妻/アン・クラーク・アモール/角田信恵/彩流社/2000
『思い出のケンブリッジ』の中で、ダーウィン家でオスカー・ワイルドの劇をやっていたと知り、ああいう理由で投獄された作家の作品でも関係なかったのか?と不思議に思っていました。その記憶があったので、ふと手にとった本。ワイルド家のパーティに出席していた人々の中には、『思い出のケンブリッジ』第1章にも名前の出てくる人もいます。ワイルド夫人については何も知らなかったのですが、女性の衣服改革の必要性を訴え活動を行うなど、ワイルドの陰に隠れた家庭の主婦というだけではなかった事を知りました。それにしても、アルフレッド・ダグラス。写真をはじめて見ましたが、とても人間とは思えなかったです。きたのじゅんこさんが描く天使のようだった。この外見であの性格では、人生狂わされるのも仕方ないかも・・・。


クマのプーさんと魔法の森/クリストファー・ミルン/石井桃子/岩波書店/1977
著者は『クマのプーさん』の作者A・A・ミルンの息子であり、物語のモデル、クリストファー・ロビン本人。本書はクリストファーの自伝であり、父ミルンの伝記でもあります。ここにこの本を加えたのは、彼がジョン・コーンフォードとほぼ同世代(クリストファーの方が5歳下)で、ジョンと同じくストウ校からケンブリッジ大学へ進学していたこともあり、この時代の少年がどのような環境で育てられていたかを知る一つの例としてあげてみました。私がプーの大ファンであることも少しは関係していますが。子供時代の「あまりいつも一緒にいたので、ナニーはほとんど私の一部になってしまったほどだった。そこで、時折、両親に出会うことのほうが、その日の出来事としてきわだつ結果になった。」というのは、英国の良家の子供たちほとんどに当てはまると思います。


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