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【3】  少女漫画 −プチフラワー/フラワーズ−

私は漫画をあまり幅広く読んではいません。好みがハッキリしているのでこの十数年、雑誌ではプチフラワーくらいしか読むものが無かった。そのプチフラワーも、数年前から買うのが辛くてしかたがないほどつまらなくなっていました。そんな頃、フラワーズへとリニューアル。他の少女/女性誌よりはまだ読めるのですが、それでも、80年代後半〜90年代前半頃と比べると・・・。諏訪緑の連載がなければとっくにコミックス(萩尾望都、名香智子、波津彬子など)派に落ちてました。

「こういう作品が読みたいんだよぉぉぉ!」という叫びとともに、「こんなに良い作品が消えていきそうなんて変だ!最近諏訪緑を知って驚かれた方々!彼女以外にも素晴らしい作家&作品が埋もれているのです!読んでみてください!」という少女漫画普及活動の一つとして書いてみました。


べんがら格子の家(全3巻)/神坂智子/小学館プチフラワーコミックス
1999年7月号〜2002年1月号で連載。神坂作品の中では、私はこれが一番好き。連載が始まった頃は横溝正史な話かと思い、毎回ビクビクしながら読んでましたがこれは本当に隠れた名作。

 第一作(1巻、主人公:百香)は戦後の話、
 第二作(1巻、主人公:登=百香の祖父)は明治25年〜昭和15年頃、
 第三作(2〜3巻、主人公:蕾=登の叔母)は明治維新〜大正初期
 第四作(3巻、主人公:新右衛門=蕾の父)は江戸末期

と、岡山の旧家・柾木家の繁栄と没落を描いています。おすすめは第三作「君くれなゐに」(2巻〜3巻)。明治という時代と、そこに生きた、ちょっと破天荒な女性の一生が鮮やかに描かれています。これ単体でもおすすめですがやはり通してお読み頂きたい。巻数も少ないですし。そっけないほどさらりとこんな話を描いてしまった神坂さんに脱帽です。プチフラ買うのが一番辛かった時期に、私がなんとか持ちこたえられたのは諏訪作品とこの「べんがら」シリーズがあったから。できればこのシリーズの続きを、縦(現代あるいは江戸)へでも横(明治〜昭和)でもいいですからお願いしたいです。個人的には、百香ちゃんの叔母で登の娘である竹子さん、それから蕾の妹、つた・すみちゃんたちの話が読みたいんですけども。


ふしあな/塩川桐子/小学館プチフラワーコミックス
江戸時代を舞台にした作品を描く塩川桐子の、おそらく唯一のコミックス。浮世絵がそのまま漫画になったような不思議な絵です。独特すぎて、プチフラ以外での掲載は難しかったでしょうね。青年誌のほうがまだ合うんじゃないかと。収録作品は1994年から1998年までの短編「ふしあな」「函の中」「寂滅」「錆」「歳月」。「ふしあな」は万人受けする作品ではありませんが、「函の中」は泰平の世の無邪気な子どもと、戦乱の世の情けないご先祖様という二つの話がいい感じに一つになっていてとても面白い。「歳月」は夫婦の愛情をしっとりと描いていて、よく考えると全然プチフラ向きの話ではなかったのに、お気に入りの作品になってしまった。フラワーズでは無理なのか?こういう独特な作品が時々載ってしまうような懐の深さが欲しいです。


うすげしょう/上杉可南子/小学館プチフラワーコミックス
飛天の舞/上杉可南子/小学館プチフラワーコミックス
大正のきいろい月/上杉可南子/小学館プチフラワーコミックス

三冊とも絶版です。初版はそれぞれ、1988年、1990年、1992年。何故これが絶版なのだ、と怒りで身体がふるえてしまいます。古書店でもあまり見かけないし、本当にもったいない。現代モノ、明治〜大正〜昭和初期モノと、舞台は様々ですが、男女の妖しく、そしてせつない雰囲気がお好きな方にはおすすめです。上杉可南子はこの三冊を出した後くらいからプチフラでは見かけなくなりました。後にレディース誌で描いていると知り、既に出ていたコミックスを読んでみたのですが・・・プチフラ時代の作風とのあまりの違いに倒れそうになりました。一体何があったのだろう、と呆然とするほどの変わりよう。結局数冊読んだだけで挫折。私は「初期の」上杉可南子ファンである。と言い続けて今に至ります。検索したら書評を書いている人も少なくて二重にショック。なので、これらは別ページでもう少し詳しく書かせて頂きます。


辺境警備(全6巻)/紫堂恭子/小学館プチフラワーコミックス
これも絶版。でも角川から復刊してますので現在でも入手可能です。舞台、人物、画、どれも強引なところが無く、ファンタジーが苦手な私でも最初からファンになったほど。プチフラ作品ではないけれど、同時代に描かれた「グラン・ローヴァ物語」(角川・全四巻)とあわせて、「指輪物語」などがお好きな方にはおすすめです。当初は、「女」で失敗し辺境に左遷されてきた隊長さんが主人公の一話完結の短編でしたが、途中から神官さんが主人公の長編作品に。どちらかと言えば隊長さん主役のほのぼの話が私は好き。旅籠屋・踊る子馬亭とか、「指輪」への愛が見え隠れする、完成度の高いファンタジー作品です。


Shang-hai 1945(全2巻)/森川久美/小学館プチフラワーコミックス
絶版ですが、2003年4月に講談社から文庫版が出ます。角川から出た森川久美全集にも収録されているそうなので、そちらを探されてもOK。この作品は、ご存じの方も多いと思いますが「南京路に花吹雪」の続編です。連載第10回のあらすじには「5年ぶりに上海に帰ってきた本郷義明。昔なじみの蔡文姫とも再会したが、彼女はすでに李光裕と結婚していた。本郷は十三軍司令部の白浜中佐に呼び出され、アヘンの仕事を頼まれる。断固として断る本郷だったが、白浜中佐のワナにはまり、仕事を手伝うことになってしまう。本郷はロシア人・レプニーンの家に同居するうち、次第に軍事物資やアヘンをめぐるウラの陰謀に気づき始める。」とあります。日本軍の謀略モノで、登場人物の平均年齢も高くて(40代?)、プチフラじゃなきゃ連載できなかっただろうなという作品。大昔のLaLaなら可能だったでしょうけど。でも、当時10代の私が苦も無く読めたんですから。「少女」を見くびらないで欲しいものです。


「諏訪緑にたどり着くまで」にも書きましたが、この当時のプチフラは上杉可南子、紫堂恭子、西炯子、そして諏訪緑と、読み応えのある作品を描く新人さんが多くて毎号楽しみでした。そんな雑誌があれば別に値段が高くても迷わず買うんですけどね。

(2003/01/07)


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